2025.04.26|最終更新日:2025.04.23
目次
今なお階級社会の影響が残る英国では、中流階級以上に育つ子どもの多くは幼い頃から各種スポーツの他に、楽器(声楽)演奏、美術、スピーチや演劇を嗜むことが奨励されています。
英国における音楽教育とその社会的意義
声楽を含む楽器演奏に関しては、ABRSM(Associated Board of the Royal Schools of Music)による全英レベルの音楽検定(Grade1~Grade 8、Grade 8以上はDiploma 1,2,3)が実施されており、将来就職する際の履歴書に保持するグレードを記載できるほか、家庭での集まりなどで即興で合奏をしたり、地域の催しなどで即席でオーケストラを編成したい場合に、各楽器のグレードを保持した人々がさっと集まってすぐに演奏できる、というようなことも珍しくありません。
演劇とスピーチ:リーダー育成を支える教育
また演劇やスピーチというのは、単に生活を彩どる楽しみの要素というよりは『将来に社会のリーダーとして活躍する人材を育てる』という教育理念に根差しています。
演劇は多くの生徒や先生が関わって一つの演目を仕上げて行くことで人と人とが協力し合う意義を学び、演者や裏方など様々な役割を担うことで、社会を構成する様々な人種や育ってきた環境が異なる人同士の立場や価値観を理解することにつながります。
スピーチはクラス内での発表に留まらず、全校のイベントや式典など大衆の前で詩や物語の朗読や自分の意見を披露することで、臆することなく人々を惹きつける魅力的な話し方とはどういったものかを学びます。
ボーディングスクールにおける藝術教育の実際
このような藝術教育が充実した学校環境は、私立プレップスクール(小学校)⇒私立シニアスクール(中学・高校)⇒大学で与えられるケースが多いのですが、この過程において、日本のように「受験のために学業以外の嗜みのレッスンを中断する」という考え方は英国の私立の学校教育の中では一般的ではありません。むしろ嗜みの領域は、かなり厳しい難しい課題を要求される学業に取り組まなくてはならない子ども達の精神面を支え、人生を豊かにするために欠かせない領域と考えられています。
寮制学校でのタイムマネジメントの学び
Boarding School(寮制の学校)の場合は、楽器の個別レッスンは学校の授業中に、オーケストラ・美術・演劇・スピーチ・スポーツなどの練習は授業が終わった課外に行われます。
特に楽器のレッスンは担当の先生ごとに「いつ誰のレッスンがどこであるか」が事前に告知され、それぞれの子どもが自分で時間を見極めて授業を抜け出してレッスンに向かう必要があります。授業を担当している先生は楽器レッスンには関与していませんので、それぞれの子どもが何時に何処へレッスンに行くべきかは知る由もありません。
幼い子どもの場合は、授業に集中し過ぎてうっかりレッスンへ行くのを忘れてしまうことが多々ありますが、レッスンに現れなかった場合でも親にはしっかりとレッスン料が請求されるので、子どもは幼い頃より、タイムマネジメントスキルと自分が責任を持つことの重要さを学ぶことになります。
なお、Day School(通学制の学校)の場合は、課外で行われるこの嗜みの領域の教室に通う子どものための送迎を保護者かベビーシッターなどが担っています。
忙しい中でも自律を育む環境
また課外で行われるスクールオーケストラは定期的にコンサートを行いますが、コンサートの開始時間は実社会同様に大抵は19:00前後。終演は22:00を過ぎることもあります。
夕食後にコンサートの事前練習に参加して本番を迎えますが、寮で共に暮らす他の子どもはこの時間は宿題や予習に充てる時間。オーケストラメンバーだからといって各教科の先生は宿題を減免するなどの容赦は一切しませんし、宿題を忘れると罰則を食らいますので、コンサート終演後に眠い目をこすりながら消灯時間までに課題を猛スピードで仕上げたり、早朝に起きて課題に取り組んだりします。
更に長期休暇の際には、必要に応じて上記の芸術教育の補強のためのレッスンや機会を親がアレンジしたり送迎したりする場合があることは言及するまでもありません。
息子の経験と教育の成果
息子は”Busy Boy is a good boy.”と言われている中高一貫の学校でAcademicとMusicの奨学生でした。同じ寮で暮らす他の生徒達も先生がたも息子の常日頃の生活ぶりや様々な課題をこなすための陰の努力を見聞きしているので、それを認めざるを得ず、息子が最終学年で学校創立以来初めての日本人のDeputy Head Boyに選ばれた際は、誰も異を唱えたり、妬むことはありませんでした。
子どもの未来への投資としての英国留学
私立のシニアボーディングスクールの生徒のスケジュールは本当に“忙しい”の一言に尽きますが、それぞれの子どもの個性を伸ばす豊かなカリキュラムや施設、指導する経験豊かな先生やスタッフが揃っています。そして子どもはその忙しい暮らしの中で自分を律したり、他者への思いやりを育む機会が存分に与えられています。
保護者の皆様、どうぞお子様の将来へのギフトとして英国留学の機会を考えてあげてください!