2025.06.28|最終更新日:2025.06.26

【国際教育の基礎知識】IB(国際バカロレア)とは?イギリスで学べる探究型カリキュラムを解説

目次

IBの概要

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、1968年にスイス・ジュネーブで設立された国際バカロレア機構(IBO)が提供する教育プログラムです。世界中の生徒に対して、国際的に通用する大学入学資格を与え、思考力・探究力・表現力といった幅広い能力の育成を目指しています。

IBの理念

IB教育では、以下のような価値観を重視しています:

  • 考える力:自ら問いを立てて深く考える姿勢
  • 国際的な視野:多様な価値観を理解し、尊重する心
  • 多角的な学び:教科の枠を超えた統合的な学習

IBの4つのプログラム

IBは年齢に応じて以下の4つのプログラムが提供されています:

  • PYP(Primary Years Programme):3〜12歳向け(小学校)
  • MYP(Middle Years Programme):11〜16歳向け(中学〜高校前半)
  • DP(Diploma Programme):16〜19歳向け(高校後半)
  • CP(Career-related Programme):16〜19歳向け(職業専門教育)

本コラムでは、特にPYP・MYP・DPの3つを中心に紹介します。

PYP:3歳〜12歳向けの探究型学習

特徴

PYPでは、子どもが自ら質問を立て、調べ、考え、発表する「探究のプロセス」を大切にします。教科ごとの学びではなく、6つのグローバルテーマを通じた横断的な学びが特徴です。

6つのテーマ

テーマ説明
自分自身について健康、信念、価値観、人間関係などを探究
私たちの居場所と時間歴史・地理・時間・社会の変化について
表現の方法言語や芸術などによる自己表現
世界の仕組み科学・自然・環境・技術に関する理解
自分たちの組織社会構造・法律・経済・コミュニティについて
地球の共有持続可能性・責任・資源の分配について

学びの例

例えば「地球温暖化」というテーマでは、理科+社会+言語の要素を統合して学ぶなど、教科横断的な学びを実現しています。

MYP:11歳〜16歳向けの多面的な学習

特徴

MYPでは、PYPで培った探究心を基盤に、教科別の専門性も深めます。すべての学習において「なぜこれを学ぶのか?」という目的意識を重視し、実社会とのつながりを意識したカリキュラムが構成されています。

8つの教科グループ

教科説明
言語と文学母語の読解力・表現力の向上
言語取得第二言語としての英語やその他外国語
個人と社会歴史・地理・経済・社会学など
理科生物・化学・物理などの自然科学
数学数的思考や問題解決力の育成
芸術音楽・美術・演劇など
保健体育健康管理・スポーツ・運動能力の向上
デザインデザイン思考や技術的な問題解決力

パーソナルプロジェクト

MYPの最終年には「パーソナルプロジェクト」と呼ばれる個人研究を行います。
例:

  • 環境問題に関するドキュメンタリー制作
  • アプリケーションの開発
  • 教育制度比較の論文執筆 など

DP:16歳〜19歳向けの大学進学準備プログラム

特徴

DPでは、大学進学に向けた学問的準備と共に、批判的思考や自己管理能力の育成も重視されます。6つの教科グループと3つのコア要素から構成されています。

6つの教科グループ

教科説明
言語母語の文学と表現力を深める
第二言語英語などの外国語能力を高める
人文系歴史・経済・地理など社会的理解を深める
理系生物・物理・化学などの自然科学分野
数学論理的思考と計算能力の習得
芸術音楽・美術・演劇などの表現活動

3つのコア要素

  • EE(Extended Essay)
    興味のあるテーマを4000語の論文にまとめる独自研究
  • TOK(Theory of Knowledge)
    「知識とは何か?」を哲学的に考察する授業
  • CAS(Creativity, Activity, Service)
    芸術・スポーツ・奉仕活動を通じた実践的な学び

イギリスでIBが受け入れられている大学

イギリスでは、IBディプロマを取得した生徒を積極的に受け入れる大学が多く存在します。IBは、世界中から多様な背景を持つ優秀な学生を惹きつける指標として、大学側から高く評価されています。

ほとんどの名門大学でIBディプロマは認められており、学部や学科によって異なる要件があります。出願にあたっては、各大学の公式サイトなどで最新情報を確認することをおすすめします。

おわりに

IBは、知識の習得だけでなく「なぜ学ぶのか」「どう活かすのか」を深く考える教育です。探究型の学びを通して、グローバルな課題に自ら向き合える力を育てるIBは、これからの時代にますます求められる教育プログラムといえるでしょう。

目次

森重弥須美

記事執筆森重弥須美

もりしげ やすみ

Kens Academic コンサルタント

在英歴14年(通算20年)。二人の息子をイギリスのボーディングスクールで学ばせ、卒業へと導いた経験に基づき、成功談だけでなく苦労した点も含め、リアルな体験に基づいた実践的なサポートを提供しています。

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