2025.05.17|最終更新日:2025.05.16
目次
6th Formとは何か?英国の学年と伝統的な呼称
英国の教育制度について、弊社のオンライン無料セミナーなどにご参加の皆様には何度かお話しておりますが、公立校の小学校に該当するPrimary School、中学校に該当するSecondary Schoolや私立校のPreparatory School、Senior Schoolに続く進学課程として、6th Formシックス・フォームと呼ばれる聞きなれない単語を耳にされて戸惑う保護者の皆様が多くいらっしゃるかと思います。
英国におけるFormの意味と年齢対応表
Formというのは、英国の教育制度における伝統的な学年の呼び方で、現在の英国の教育制度の学年割や年齢と並記すると下記の通りとなります。
Form Name | Modern Year | Typical Age |
First Form | Year 7 | 11–12 |
Second Form | Year 8 | 12–13 |
Third Form | Year 9 | 13–14 |
Fourth Form | Year 10 | 14–15 |
Fifth Form | Year 11 | 15–16 |
Lower Sixth | Year 12 | 16–17 |
Upper Sixth | Year 13 | 17–18 |
現在では、First Formから5th Formまでの呼び方はあまり聞かなくなり、(と言いながらも、一部の伝統校ではいまだに5th Formという呼び名が残っている学校もありますが)6th Formと呼ばれる部分だけが日常的には良く使われています。
6th Formというのは、日本の高校にあたる部分で、Lower SixthとUpper Sixthの2年間に渡るコースです。
GCSEからAレベルへ:6th Formでの学びの概要
Aレベル試験の目的と履修科目数
Year 11の終わりに中等義務教育修了試験General Certification Secondary Education(GCSE)を受験した後、6th Formでは A Level(Aレベル)と呼ばれる大学入学試験に備えて勉強します。大学に入学するためには、Aレベルの試験にパスしなければなりませんが、大学側が入学の条件として各学部が要求しているのは最低3科目の試験結果なので、通常の学生は3科目以上勉強します。また、オックスフォード大学やケンブリッジ大学を志望する生徒は、4~5科目取っている場合が多く、通例非常に高い成績が要求されます。
ここまでで履修する科目数だけに着目すると、日本の国立大学を志願したことのある日本人の保護者の方々の中には、「大した科目数でないから平易なのでは?」と感じる方々もいらっしゃるかもしれませんが、その専門的な内容を理解するには相当に真摯で集中した学習が要求され、アメリカや日本の大学で学ぶ一般教養の内容やかつての日本の旧制高校の学びと殆ど変わらないとても高度な内容になっています。
またAレベル試験は全ての科目において記述式一点張り。日本の大学入試のような選択式は一切ないので、答案として記述する自分の議論の展開に対して周到な準備をしなければ良い評価は得られません。
Aレベル試験に向けた模試・課題と合否判定のプロセス
6th Formでは、2年目の6月から7月にかけてAレベルの試験を受験しますが、それより前の課程でmock test(模擬試験)を何度も受験し、その結果が6th Formでの内申点となり、また大学によっては、最後のAレベル試験前に学部ごとのaptitude test(学部進学適正試験)、エッセイ提出や面談を課します。このように、多くの大学は、8月のAレベル試験最終結果発表前にGCSEの結果や6th Form在籍中の内申点や学部によるaptitude test、エッセイ、面談などを考慮しながら入学選考を行い、合格判定を行います。合格判定には、Aレベルの試験結果を踏まえた条件付きの判定(Conditional Offer)と試験結果を問わず入学を認める判定(Unconditional Offer)の二通りがあります。
Aレベル試験の採点方式と上位試験制度
前述の通り、6th Form2年目の6月から7月にかけて全国一斉に行われるAレベル試験を受け、8月半ばに結果が発表されて各自に知らされます。判定はA*・A・B・C・D・E(合格)・U(不合格)の5段階で採点されます。数学科目に限定して、優秀な学生の為にAレベルより高いAdvanced Extension Award(AEA)試験が導入され、合格の採点評価にはDistinction・Merit・Unclassifiedがあります。
評価基準の柔軟性と大学ごとの合格基準
英国の大学では、日本の大学入試のように受験者全員に均一のラインを引いて合不合判定は行いません。大学によって、学部によって、更には個人が履修した6th Formの教育環境によって、個々人に要求される合格点が異なります。(placeをofferするという表現が使われます。)
日本の共通テストとの違い
その観点から、英国の統一大学入試であるAレベルは、日本の大学入学共通テストとは似て非なるものと言えます。
学校ごとの科目開講状況と転校の可能性
多くのSecondary School(公立の中学校)やSenior School(私立の中学校)には6th Formを併設しているので、引き続き同じ学校で勉強できますが、Aレベルの試験科目は大変幅広い範囲にわたっており、(受験科目として日本語が選択できる場合もある)学校によってAレベル準備のために履修できる科目数が異なるので、希望科目がある学校へ移らなければならない場合もあります。
公立・私立に問わず、他校の6th Formに移ることも可能です。
入学の可否と手続きの進め方
日本の高校同様に6th Formは義務教育ではありませんが、公立校に併設されたは6th Formの2年間の授業料は無料です。ただし、GCSEの試験結果により、Aレベル試験を受ける能力に達していないと判断された場合には受け入れてもらえません。
6th Formへの入学の手続きは志望校に直接しますが、まず志望校に志望科目があるか否かを確かめ、中学までの成績やGCSEの結果などを揃えて入学手続きを行います。日本のように機械的に合格・不合格が決められるのではなく、個々のケースについて、校長が推薦状なども参考にして6th Formへの入学合否判定を行います。
入学における個人差と柔軟な対応例
特に日本人生徒はどうしても英語力に欠けるので、理数系に偏りがちになり、科目の選択も限られます。今までに受けた教育や英語力などについての個人差は大きいので、一般的基準を簡単に決めることができません。
更に、GCSEを受験していなくても、6h Formへの入学を認めてくれる場合もありますので、直接学校に問い合わせてみることが大切です。
6th Formの種類
6th Form単独の教育機関としては、公立の6th Form Collegeや私立の6th Form CollegeやTutorial Collegeがあります。
前述のSecondary SchoolやSenior Schoolに付設された6th Formとこれらカレッジとの違いは、程度の差だけではなく、選択できる科目の種類にあります。前者ではいわゆる学問的という科目が主流ですが、カレッジでは職業教育的な科目(BTECs、T-Level)も取ることができ、科目選択の幅が広いのが特徴です。また公立であってもカレッジと呼ばれている教育機関では授業料やテスト代を払わなくてはならないこともあります。
Aレベル合格後の選択肢:英国・日本での進学
Aレベルにパスし、英国の大学に入学する資格を取っていれば、帰国子女受験の要件を満たし、下記の例のように、日本の大学を受験する際に一部あるいは全部の試験が免除されたり、面接の際に参考点として加点されることがあります。
東京大学 、京都大学、一橋大学、慶應大学、早稲田大学、国際基督教大学など
おわりに
私たちKens Academicの教育コンサルタントは、自身の子どもを英国の大学へ進学させた様々な経験に基づき、それぞれのお子様に最適な戦略を練り、Aレベル攻略法を考え、英国の大学合格を勝ち得る近道をアドバイスすることが可能です。