2026.06.20|最終更新日:2026.06.20
目次
―日本のPTAみたいなものはあるの?―
イギリスの私立学校への留学を検討される保護者の方から「イギリスにもPTAのような組織はありますか?」という質問をいただくことがあります。
日本ではPTAというと、役員決めや委員会活動、学校行事のお手伝いなどを思い浮かべる方も多いでしょう。地域によっては保護者の負担が大きいというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。
では、イギリスでは私立学校では保護者はどのように学校と関わっているのでしょうか。
結論から言うと、PTAに近い組織は存在します。しかし、日本のPTAとは目的や運営方法が大きく異なります。
今回は、イギリスの私立学校における保護者と学校の関わり方についてご紹介したいと思います。
PTAのような組織は存在する
イギリスの私立学校にも保護者が参加する組織があります。学校によって名称は異なりますが、Friends of ○○School , Friends Association, Parents’ Association, Parents and Friends Associationなどと呼ばれることが一般的です。日本のPTAと似ている部分もありますが、大きな違いは「参加が自由であること」です。もちろん、学校を支援する組織ではありますが、加入や活動への参加は基本的に自主的なものであり、必ず役員をしなければならない、順番で委員を引き受けるといった雰囲気はほとんどありません。
活動の中心となるのは、学校運営に直接関わることではなく、保護者同士の交流を深めたり、学校行事をサポートしたりすることです。また、チャリティ活動や学校のための資金集めなども重要な役割のひとつであり、学校コミュニティ全体を盛り上げる存在として機能しています。学校側も保護者を「協力者」や「パートナー」として捉えており、義務よりも参加を楽しむ文化が根付いています。
役職の押しつけはなく、ボランティア文化が中心
日本の保護者の方が最も驚かれるのがこのボランティア文化かもしれません。
イギリスでは何かの役職や係を保護者に割り当てるという考え方があまりありません。もちろん、Parents’ Associationにも会長や役員は存在しますが、多くの場合は「やりたい人が手を挙げる」という形です。学校イベントでお手伝いが必要な場合も、「当日お手伝いできる方はいらっしゃいますか?」という案内が届き、都合が合う保護者が参加します。そのため、断りづらい、強制的に引き受けるといった空気はほとんどありません。むしろ、学校に関わること自体を楽しんでいる保護者が多く、活動は社交の場としての側面も持っています。特に海外から来た家族にとっては、こうした活動が他の保護者と知り合う良いきっかけになることもあります。
クラスレップという保護者代表の存在
イギリスの学校で特徴的なのがClass Rep(クラスレップ)と呼ばれる制度です。クラスごとに1~2名程度の保護者代表が選ばれ、保護者同士と学校との橋渡し役を務めます。クラスレップは、学校からの連絡事項を保護者へ伝えたり、イベントの案内を行ったりするほか、保護者から寄せられた意見を取りまとめる役割を担います。また、クラス内の交流を促し、新しく入学した家庭がコミュニティに馴染みやすい環境づくりにも一役買っています。
ただし、学校運営に深く関与するわけではなく、あくまでコミュニケーションを円滑にするための役割と考えると分かりやすいでしょう。またクラスレップが中心となって行う活動のひとつに「Kitty(キティ)」があります。これは、クラスの保護者から少額ずつ寄付を集める仕組みで、学期末や学年末に担任の先生への感謝の気持ちとしてプレゼントを贈る際に使われます。日本では先生への贈り物については慎重な考え方もありますが、イギリスでは一年間ありがとうございましたという感謝を表す文化として広く受け入れられています。
イギリスならではの寄付文化
イギリスの私立学校を語る上で欠かせないのが、寄付文化の存在です。多くの私立学校では、保護者や卒業生に対して積極的に寄付を呼びかけています。日本では学費を払っているのにさらに寄付?と驚かれることもありますが、イギリスでは学校コミュニティ全体で教育環境を支えるという考え方が根付いています。集められた寄付金は新しい校舎や施設の建設、スポ―ツ設備の整備、奨学金制度の充実、芸術活動への支援、図書館や研究施設の拡充などに活用されます。名門校の美しいキャンパスや充実した施設の背景には、こうした長年の寄付文化があるのです。
チャリティマラソンやガラパーティーとは
寄付を集めるための活動も実にイギリスらしいものです。たとえば、チャリティラン、スポンサーウォーク、ベイクセール、オークション、ガラパーティー、などが定期的に開催されます。中でもガラパーティーは日本ではあまり馴染みがないかもしれません。ガラパーティーとは、学校や慈善団体が主催するフォーマルな募金イベントのことです。保護者や卒業生、学校関係者がドレスアップして参加し、ディナー、ラッフル(抽選会)、チャリティオークション、エンターテインメントなどを楽しみながら募金を集めます。オークションでは、旅行券やレストランの食事券、スポーツ観戦チケットなどが出品されることもあり、参加者は楽しみながら学校支援に貢献します。こうしたイベントは単なる資金集めではなく、学校コミュニティの結束を深める大切な機会にもなっています。
保護者同士のつながりも学校生活の魅力
私自身がイギリスの学校に関わる中で感じたのは、保護者同士の距離の近さです。学期末や学年末、それ以外でも定期的に学校そばのカフェに集まり、クラスの保護者同士でお茶をのみながらおしゃべりをすることがよくありました。時には父親だけでパブナイトを開催したり、母親だけでナイトアウトをしたりもしました。話題は子どもの学校生活のこともあれば、休日の過ごし方や旅行の話など、本当にたわいないものです。特別な打ち合わせではなく、自然な交流の場として存在していました。同じ学校に子どもを通わせる保護者同士のネットワークは大きな支えになります。学校を通じて築かれた人間関係が、子どもだけでなく親自身の生活を豊かにしてくれることも少なくありません。
学校と家庭がチームになる英国教育
イギリスの私立学校における保護者の関わり方は、そこには義務や負担というよりも、「学校のコミュニティの一員として参加する」という考え方に近い気がします。
ボランティア活動、寄付文化、チャリティイベント、保護者同士の交流など、さまざまな形で学校を支えながら、学校と家庭が同じ方向を向いて子どもの成長を見守っています。英国教育の魅力は教室の中だけで完結するものではありません。学校、家庭、そしてコミュニティ全体がチームとなって子どもを育てる文化もまた、その大きな特徴と言えるでしょう。イギリスの私立学校やボーディングスクールへの進学を検討される際には、教育内容だけではなくて、こうした学校コミュニティの文化にもぜひ注目してみてください。